離婚時は「退職金の財産分与請求」も忘れずに―財産分与できる条件・請求額の算定方法を解説

離婚時に「配偶者の退職金」も財産分与請求の対象にできることをご存知でしょうか。

退職金についてはつい忘れられがちですが、40代以降のセカンドライフを目前とした熟年離婚では、清算を要する重要なお金です。

どのようなケースなら退職金を財産分与対象とすることができるのか、その算定方法も含めて弁護士が解説します。

退職金も財産分与の対象になる


配偶者がもらう退職金は、財産分与の対象となり得ます。

過去の裁判例では「退職金には賃金の後払い的性質がある」とされており、結婚生活中のキャリアを陰から支えてきた妻(あるいは夫)の功労があると認められているからです。

言い換えれば、退職金は夫婦が協力し合って築いた財産(=共有財産)です。

家計のやりくりで貯めた貯金や購入した不動産と同じく、結婚生活への寄与分として退職金の財産分与を請求できます。

財産分与請求が認められやすいケース


しかし、必ず退職金の財産分与請求が認められるとも限りません。

あくまでも「近い将来に退職金が支給される確実性(蓋然性)が高い」と判断されたときのみです。

    【退職金支給の確実性が高いと見なされる条件】

  • 定年退職までの期間が相当短い(10年以内)
  • 就業規則に退職金支給規定がある
  • 勤務先の規模・業種・経営状態・職種を総合的に判断して、支給される可能性が高い
【Point】豊かなノウハウで退職金の分与請求を実現します。

分与請求の相手方の多くは、収入面で家庭を支えてきたという自負があります。

専門家から財産分与のルールを説明せずに「退職金を分与して欲しい」と主張しても、うまく理解してもらえないでしょう。

弊所では、豊富な経験だけでなく同業者との交流も通じて「交渉のノウハウ」を蓄積しています。

より早い段階で協議をお任せいただくことで、比較的高額になることの多い退職金の財産分与請求も成功に導けます。

【算定方法】退職金の財産分与額


独身時代から勤続実績があるなら、退職金全体の金額のうち結婚生活の年数分のみ財産分与の対象となります。

問題は、分与請求対象の算定の基礎となる「退職金全体の金額」をいつの時点で判断するかです。

判断は大きく「①支払い済みのケース」と「②退職前でまだ支払われていないケース」の2つに分かれます。

①支払い済みのケース


すでに退職していて退職金が支払われているのなら、その支給額をもとに財産分与請求権の対象となる金額を算出できます。

こちらは特に複雑な判断基準はありません。

②退職前でまだ支払われていないケース


問題は、40代~50代の離婚で想定される「将来支払われる予定の退職金を財産分与するケース」です。

退職金全体の金額として、以下どちらかのパターンの基準額を用いられますが、判例によってまちまちです。

【パターン1】離婚時点で自己都合退職した場合の金額を用いるケース

→就業規則や役職・経営状態から判断し、自己都合退職時の金額をもとに計算。

財産分与請求権の対象となる退職金の金額
= 自己都合退職時の想定退職金額  ÷ 勤続年数 × 同居年数

【パターン2】定年退職時の予定額を用いるケース

→定年退職時の予定額を用いる場合、中間利息(前倒しで債務が果たされた場合に控除される金額)を差し引き、そこから分与請求額対象を計算。

財産分与請求権の対象となる退職金の金額
= (定年退職時の想定退職金額 - 中間利息) ÷ 勤続年数 × 同居年数

分与割合は50%が原則


財産分与の割合は1/2が原則です。

つまり、財産分与請求権の対象となる退職金額の50%相当の請求がケースとして一般的です。

民法第768条3項が規定する「その協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮」により,分与の割合が変動する可能性があります。

たとえば、分与請求者に過剰な使い込みが見られるケースや、共有財産の売買取引の際の利益が手元にある場合です(東京高裁平成10年3月18日)。

退職金の財産分与請求を成功させるポイント


退職金の財産分与請求では、将来支給されたときに払ってもらう約束を交わすケースが少なくありません。

まずは離婚協議の時点で請求の意志を明確化して話し合い、法的拘束力のある方法で取り決めを交わすことが大切です。

支払い条件を指定して公正証書を作成する


退職金の財産分与の約束は、その他の離婚条件(養育費等)も含めて公正証書で残しておくべきです。

口約束や私的に作成した離婚協議書とは異なり、執行力を持つからです。

加えて、一番重要なのは「支払条件(期日や方法など)」を取り決めておくことです。

相手に潤沢な資力があるのなら、離婚成立から間を空けずに期日を設け、退職金が払われる前でもすぐに分与してもらうべきでしょう。

将来支払われる約束なら「抵当権設定」という手段もある


現時点で資力がなく将来の退職金支給時にもらう約束を交わすなら、相手所有の不動産に抵当権設定をしておき、回収の確実性を上げるという手法をとるのもひとつの策です(東京地裁平成11年9月3日判決で裁判所命令が出た例あり)。

弁護士に依頼して調停・裁判も検討する


分与請求者のこれまでの“内助の功”に対する理解が足らず、退職金の財産分与に抵抗する配偶者も珍しくありません。

弁護士に交渉を依頼することで請求成功率を上げられますが、どうしても相手が応じないようであれば、調停・裁判を辞さずに話し合いを続けることが大切です。

裁判所の判断傾向に知見のある弁護士なら、財産分与請求を最後までサポートし、実現する離婚条件を最大化することが出来ます。

まとめ


退職金は夫婦共有財産として財産分与請求が認められます。

支給済みのもの・将来10年以内に支払われる予定が対象となり、金額の目安は「婚姻期間に相当する額×50%」です。

支給額全体で100万円単位となることの多い退職金は、配偶者との収入格差が広い人(専業主婦やパート勤務者など)にとって生活を守る重要な資力となるでしょう。

公正証書による約束・早期の専門家介入で、財産分与の成功率を高めておくことが大切です。

弊所では、40代以上の離婚で「離婚後の経済に不安がある」という方に対し、あらゆる可能性を想定した総合的なアドバイスを行っています。

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