医師の離婚トラブルの特徴とは?―財産分与・開業医特有の問題の注意点

医師は高所得者であることが多く、離婚事例では財産分与を巡って争うものが多く見られます。

同業者同士の夫婦・同族経営による医療法人である場合は、ビジネス上での関係解消も必要となるでしょう。

医師特有の離婚の悩みについて、トラブルの特徴や紛争化しやすい部分について解説します。

医師の離婚トラブルの特徴・傾向


医師の離婚トラブルには、経済的清算の方法(財産分与)を巡るものが多く見られます。

家事や育児に参加できていない


医師は長時間勤務となるケースが多く、家事・育児に参加できていない家庭は稀ではありません。

この経緯が離婚原因となると同時に、離婚協議中でも不利に働きます。

家庭から距離が開けば、それだけ「家にある夫婦共有資産の状況が分からない」という状況を招きやすくなるからです。

生業への配偶者の関与率が高い


開業医・医療法人経営者の離婚事例では、配偶者がビジネスに深く関わっているものが多く見られます。

「独立時に配偶者から出資をうけた」「配偶者の実家から事業承継した」という事例では、多くがビジネスパートナーとしての関係も同時に解消しなければならないでしょう。

しかし、夫婦のプライベートな問題と混同されてしまい、上手くいきません。

医師の離婚トラブルの特徴として、往々にしてこのような事例が見られます。

医師の財産分与で解決すべき問題


第一に「財産分与で起こる特有の問題」を慎重に扱う必要があります。

具体的に、どのような対処をとれば良いのでしょうか。

問題①財産分与の割合


「財産分与の割合は1/2」が原則です。

専門職である医師は資産形成への貢献度が大きいとされ、1/2が修正される場合があります。

実際に、過去の離婚判例では「医師6割・配偶者4割」と判断されたケースもありました(大阪高裁平成26年3月13日判決)。

医師でない配偶者の貢献度が大きく評価される可能性もある


一方で、医師でない配偶者のほうが財産分与で有利となるケースもあります。

「医師資格の取得時からサポートがあった」「開業医で配偶者も経理などのバックアップ業務を行っている」というケースでは、配偶者に1/2を超える財産分与が認められる根拠となります。

問題②事業資産の分与方法


次に問題となるのが、開業医・医療法人経営者のケースです。

本来、事業資産のうち夫婦共同で個人的に出資したものは、払い戻して財産分与対象としなければなりません。

これは現実的に不可能である(事業継続にかかわる)ため、夫婦出資分の事業資産の評価額を算定し、分与割合に応じた現金を支払う方法をとる必要があります。

そもそも個人資産と事業資産の区別が難しい


中小規模の医院では、個人資産(夫婦の個人的な出資によるもの)と事業資産の区別が難しいのが難点です。

どこまでが夫婦の出資分か・どこからが第三者提供分かは、冷静に話し合える状態の夫婦間でも認識にズレが生じるでしょう。

弁護士・税理士などの専門職の力を借り、医院の財務をプロが分析しながら切り分ける必要があります。

結婚前の出資は「価額の上昇分」だけが分与対象


出資が結婚前に行われたものなら、婚姻期間中(=同居期間)の価額上昇分だけが財産分与対象になると明らかにされています(前項大阪高裁判決)。

しかし「出資当時の記録があいまいである」「価値上昇をどの程度評価すればいいのか分からない」という例は稀ではありません。

やはり専門家の力を借りて入念に調査・算定を行う必要があります。

財産分与以外で解決すべき問題


財産分与以外にも、医師の離婚では様々な特有の問題が生じます。

その代表格と言えるのが、慰謝料・医院の先代経営者との関係です。

慰謝料の問題


医師はその所得から「高額慰謝料が妥当だ」と思われがちです。

一方で、慰謝料の相場は100~200万円程度であり、職業や収入によって大きく変化することはありません。

しかし、家事不参加や有責行為で精神的苦痛を強く感じている相手方に対し、直接理解を求めるのは難しいでしょう。

そこで、弁護士介入による交渉・調停対応が必要となります。

【弊所の強み】有利/不利ではなく「公平性」を重視しています。

収入格差や就労能力に格差のある夫婦ほど、どちらかが一方的に有利になる離婚は望ましくありません。

経済的にも精神的にも公平性を保ち、お互いがじっくりと話し合った上で納得できる離婚を実現すべきです。

弊所での受任ケースでは「夫婦がお互いに果たすべき責任を果たす」「公平かつ将来の生活保証に配慮した離婚条件の実現」の2点を心がけています。

養子縁組の解消


配偶者の実家から受け継いだ医院・医療法人であれば、承継をスムーズにするために養子縁組しているケースも多く見られます。

こういった事例では、婚姻関係と同時に養子縁組も解消しなければなりません。

多忙な医師にとっては意外と忘れがちなポイントですが、離婚後のトラブルを防ぐために忘れてはならない手続きです。

まとめ


医師の離婚の多くは「なかなか家事に参加できない」「配偶者の生業への関与率が大きい」といった事情を抱えています。

これを背景にした財産分与を巡るトラブルは後を絶ちません。

結婚生活中の貢献度を十分反映した分与割合を決め、財産分与の対象額・評価額を見定める上で、弁護士のフォローが役に立ちます。

財産分与以外の問題においても、難しい交渉や見落としがちな手続きを任せられるでしょう。

弊所弁護士は、職業や資産状況が特殊な離婚問題についても知見を深めています。

臨機応変で多角的な離婚アドバイスはお任せください。

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