離婚時の財産分与は「1/2」が原則―分与対象となる財産&注意点を弁護士が解説
離婚原因に関わらず、将来のお金の問題を解決するために「財産分与」を請求する権利があることをご存知でしょうか。
夫婦が協力して築いた財産は原則50%ずつ分け合うことになり、その対象は負債・年金・退職金などと広範に及びます。
財産分与できること(分与対象となる資産が十分あること)を知らずに離婚手続きを始めてしまうと、対処が遅れるほど不利になると言わざるを得ません。
財産分与の基礎知識と注意点について、弁護士が解説します。
財産分与の種類
財産分与とは、曖昧に同居生活中の資産を分け合うという手続きではありません。
分与の目的・対象となる資産により、財産分与は大きく以下3種類の性質に分けられています。
①清算的財産分与(民法768条)
…結婚生活中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を、それぞれの功労に応じた割合で分与。
②扶養的財産分与(民法760条・752条)
…婚姻期間中に発生し続ける生活費(食費や日用品代など)を夫婦で分担すると考え、収入に対する支出額が少ない方の配偶者からもう一方へと不足分を支払う。
慰謝料的財産分与(民法719条・752条)
…離婚原因を作った配偶者から、これにより精神的苦痛を負った配偶者へ、苦痛に見合う金額を支払う。
本記事で紹介するのは①清算的財産分与です。
実際に財産分与の請求を行う際は「共有財産の内訳と評価額はどのくらいか」をそれぞれ計算し、配偶者に請求しなければなりません。
「お金の問題=もめやすい」とイメージされがちですが、決してそのようなことはありません。
最初にしっかりと財産分与請求について認識のすり合わせを行っていれば、円満解決は十分望めます。
弊所では、夫婦共有資産の適正な評価の仕方・分与方法・離婚協議書の作成をケース毎にご案内しています。
相手が穏当な態度で財産分与に応じる姿勢を見せていても、まずはご相談ください。
財産分与の割合
清算的財産分与の割合は原則1/2とされています。
この分与割合は、収入格差が大きい夫婦(会社経営者の夫と専業主婦など)でも変わりません。
収入ではなく家事も共有資産形成への貢献と見なされているからです。
財産分与の対象となる財産
清算的財産分与の対象となるのは、婚姻生活中に形成した以下の①~③の資産です。
特に忘れられがちなのは、マイナスの財産や現に発生していない権利(年金や退職金)も考慮されることです。
①現預金・不動産・動産類
清算的財産分与のなかでも、以下の換価処分しやすいものは直接的に離婚後の生活に影響します。
「夫婦各々の“へそくり”(お小遣いをやりくりしながら貯めたもの)」も分与対象です。
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【清算的財産分与の対象となるもの①】
- 現金
- 預貯金
- 居住用不動産
- 自家用車
- 結婚生活のために購入した家財類
②年金・保険料・退職金
婚姻生活のために契約して支払っていた保険料は、解約返戻金を財産分与の対象とすることが出来ます。
遠い将来の生活にかかわる「年金支払い記録」も忘れず分与請求しなければなりません。
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【清算的財産分与の対象となるもの②】
- 扶養者の支払い済み保険料
- 支払い済み保険料(生命保険や学資保険など)
- 退職金(将来もらえるもの含む)
③負債(住宅ローン等)
忘れてはならないのが「マイナスの共有財産」も考慮される点です。
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【清算的財産分与の対象となるもの③】
- 住宅ローンの残債
- 自動車ローンの残債
- 教育ローンの残債
- 借金(生活費支出目的)の返済義務
財産分与の対象にならないもの(民法762条)
特有財産(夫婦どちらかが単独で築いたもの)は財産分与の対象外です。
より具体的には、以下のものが該当します。
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【特有財産】財産分与の対象にならないもの
- 実家から相続した財産
- 結婚前または別居後に取得した財産
夫婦が別居を開始すると「実質的に婚姻関係が破綻している(協力関係にない)」と判断されます。
したがって、別居後に新しく形成された財産は分与対象財産とは考えられていません。
財産分与の注意点
財産分与請求を成功させるポイントは、なるべく離婚を切り出すのと同時に適正な手続きを行うよう心掛けることです。
時効成立または財産隠しの懸念があり、一旦トラブルが生じると対処難易度が上がってしまいます。
財産分与には時効がある
財産分与請求権には「離婚後2年間」の時効が設けられています(除斥期間/民法768条2項)。
通常の金銭債権の消滅時効とは違い、内容証明による請求・訴訟提起等による時効成立の阻止はできません。
財産隠し防止に「保全処分」も検討を
相手の財産隠しを防止するための最終策として「審判前の保全処分」も検討しましょう。
家庭裁判所に左記処分の申立を行うことで、勝手に財産処分が行われることのないよう仮差押え・仮処分に準じる措置が取られます。
審判前の保全処分は、平成25年施行の家事事件手続法により、離婚調停中に申し立てることが出来るようになりました(同法105条第1項)。
財産分与請求はなるべく弁護士に相談を
一見円満に話し合えそうな夫婦でも、共有資産についての認識のズレ・負債額や現在の住まいなどを巡り、思わぬトラブルに発展することがあります。
除斥期間や財産隠しリスクも念頭に置くと、出来るだけはじめから弁護士のサポートを得るのが望ましいでしょう。
弊所では、お金の問題に不安を抱えるかたへ「状況の理解」を重視したアドバイスを行っています。
無料相談を活用の上、気軽にお悩みをお聞かせください。