不貞慰謝料請求のための“証拠”の種類と収集方法とは?違法証拠収集に注意を
不貞が発覚したときは、できる範囲で証拠を確保しておきましょう。
相手の言い訳を封じるためだけでなく、調停または裁判に発展したときの必須提出物として活用できるからです。
とはいえ、どんなものが証拠能力を有するかが問題です。
不貞の被害者自身が「これこそ決定的証拠だ」と確信していても、実際には立証能力が低いものも存在します。
最初に意識するべき証拠獲得の目的・具体的に立証手段となるものとその集め方のそれぞれについて、弁護士が解説します。
不貞の証拠獲得の目的
不貞の証拠を集める本来的な目的は、不貞相手の身元特定・配偶者の言い訳防止の2点です。
例えば、以下のような場面で相手方への反論材料として利用することが出来ます。
…すでに特定していることを説明し、不貞相手にも慰謝料請求を行うかどうかは被害者の判断だと理解してもらう。
・不貞は一回きりだったと配偶者が主張する場合
…証拠を提示して、継続的な関係があったこと(=慰謝料請求の根拠が揃っていること)を説明する。
これらのやりとりを終えてもなお配偶者との慰謝料請求交渉が整わない場合、最終的には訴訟手続きへと移行します。
その際は原告側(=不貞の被害者)が弁論主義に基づいて立証責任を負うことになるため、獲得した証拠をまとめて提出しなければなりません。
「当事者の身元情報を含めて不貞の証拠がある」「訴訟になってもきちんと立証責任を果たせる」と相手に伝えてプレッシャーを与えることが、不貞の証拠獲得の最大の目的です。
不貞の証拠となるもの
不貞の証拠として認められるのは「継続的に繰り返し肉体関係があったこと」を連想させるものです。
その上で、具体的に立証能力を持つものを大別すると、次のような証拠が挙げられます。
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【不貞の証拠となるもの】
- 手帳・日記・メール
- 写真または映像音声記録
- ブログ・SNSの更新内容
- 領収書・カード利用明細
- 探偵会社の調査報告書
それぞれ立証能力の程度や取得難易度に違いがあるため、さらに以下で詳説します。
①手帳・日記・メール
密会の予定日に印がつけられたスケジュール帳・メールまたはメッセージ記録(LINEやその他SNSなど)などは、立証手段として活用できます。
電子データは画像加工ソフト等を使って改ざんしやすいことから、同時に立証能力も低いのが難点です。
他の証拠と合わせて立証を補強しておくべきでしょう。
②写真または映像音声記録
不貞行為そのものや密会の様子をとらえた記録は、揺るがぬ証拠としてイメージされることの多いものです。
一方でやはり改ざんリスクがあるため、情報取得時の宿泊記録(ホテル予約日のクレジットカード利用記録など)を組み合わせて立証内容を補強するのが望ましいでしょう。
③ブログ・SNSの更新内容
不貞当事者が管理するアカウントでデート中の記事やツーショット写真が更新されているものも、不貞行為の証拠として活用できます。
発見時の対処はスクリーンショットの取得ですが、状況によりサービス提供元への発信者情報開示請求が必要となる可能性も考えられます。
問題は、一般の人からの請求は拒否されやすく、アカウント管理者(=不貞当事者)に請求されたことが知らされる点です。
自力で開示請求しようとせず、交渉が進んでから弁護士の判断に従って行うべきでしょう。
④領収書・カード利用明細
宿泊施設予約時のカード利用明細・明らかに密会のために購入したと思われる物品のレシートは、不貞行為の証拠として活用できます。
証拠として活用できるものとして、交通系ICカードまたはETCカードの利用履歴(不貞相手の自宅最寄りでの降車記録が継続的に繰り返されているもの)も含まれます。
⑤探偵会社による調査報告書
決定的な証拠がどうしてもつかめない場合、探偵会社に依頼するという選択肢もあります。
探偵による依頼達成時に発行される「調査報告書」を提出することで、離婚裁判の際に立証責任を果たすことが出来ます。
不貞行為を認めた記録(音声or念書)でも立証可能
①~③の証拠類がなくとも、不貞の事実確認を行った際の録音・念書等で立証可能です。
ボイスレコーダーや本人自筆の書面は作為的編集が難しく、当然揺るがぬ証拠として認められます。
事実確認をするときは5W1H(誰と・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように)を押さえながら告白させ、事実認定を強要したと反論させないよう被害者側も慎重に行う必要があります。
違法証拠収集に注意
慰謝料請求目的で証拠収集するときは、どんな場合であっても刑事罰や反社会性の高い行為と問われることのないよう注意しなければなりません。
実際に、不適切な取得方法だったとして証拠から排除された判例もあします。
【違法証拠収集の事例】
原告が被告の自宅に侵入して取得したノートを「反社会性の高い行為によるもの」とし、書証を認めなかった事例。
原告が提出した被告のメールの写しを「不貞の疑いを抱いた段階でメールを覗き見ることが一般的に許されるとはいえない(他の客観合理的な根拠で裏付けをとるべき)」とされ、証拠として認められなかった事例。
どこからが不適切かどうかは一般の人には判断しづらく、対応前に専門家に法律相談しておくことが何よりも重要です。
慰謝料請求は証拠がなくても出来る?
しかしながら、慰謝料請求に証拠は必須ではありません。
そもそも、私的な話し合いに立証責任が伴うとは規定されていません。
その上でなお相手方が「不貞を証明できるのか」と反論するなら、弁護士介入をもって相手に交渉のテーブルにつかせることが出来ます。
「不貞の確信」だけでもまず交渉することが大切です
不貞行為の証拠とは、不貞相手の特定・相手の賠償責任の明確化に役立つものです。
しかし、交渉する上で必須とは限りません。
無理に収集しようとすると、反対に違法性を追求されてしまう可能性があります。
500件以上の相談実績・業歴以前の離婚事例分析を通じ、最適な方法をアドバイスします。