一方的に離婚請求できる「法定離婚事由」とは―離婚してくれない配偶者の対処法
配偶者が「離婚したくない」と言い張っていても、法定離婚事由があれば夫婦関係を解消することが出来ます。
性格の不一致など、夫婦のどちらか一方だけに原因があるとは言えないケースでも、関係継続の意思が無くなれば離婚することは難しくありません。
離婚裁判や調停で認められる離婚理由に加え、離婚してくれない配偶者と関係解消を実現する方法について解説します。
法定離婚事由とは
法定離婚事由とは、離婚原因を作った配偶者側の意志とは関係なく、裁判上で離婚が認められる諸条件のことです。
その具体的な以下のように規定されています。
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【法定離婚事由(民法770条)】
- 配偶者の不貞行為
- 配偶者による「悪意の放棄」
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- そのほか「婚姻を継続し難い重大な事由」がある
実際にどのような行為が法的に離婚成立にあたるのか、以下で詳しく解説します。
①不貞行為
配偶者の不倫は法定離婚事由の代表格です。
いわゆる肉体関係(貞操義務違反)」が不貞行為とされています。
加えて、共同不法行為に基づく損害賠償請求権が発生します。
離婚を請求する人には、配偶者と不倫相手の両方へ慰謝料支払いを求める権利が認められます。
②悪意の放棄
「悪意の放棄」とは、夫婦間扶助義務(752条)・婚姻費用負担義務(760条)・日常家事債務(761条)を故意で果たそうとしない行為を指します。
実例を示すと、以下のような行為が悪意の放棄に該当します。
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【悪意の放棄に該当する例】
- 配偶者に生活費を渡さない
- 理由のない同居拒否(不倫相手と同居するケース含む)
- 些細なことで家出を繰り返す
- 実家に帰ったまま帰ってこない
- 配偶者を虐待し、帰宅できないように仕向ける
- 健康なのに働かない(転職を繰り返すケース含む)
多くの事例でDVや精神疾患など他の法定離婚事由(後述)とトラブルが併存しており、それぞれの離婚原因を根拠に慰謝料請求も可能です。
③配偶者が3年以上生死不明であるとき
配偶者の生死が分からないまま3年以上経過したときは、配偶者不在のまま訴訟提起することで法律上の婚姻関係を解消できます。
なお、裁判所から下記の証明書類の提出が求められます。
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【参考/一例】生死不明の証明書類
- 行方不明者届出証明
- 周囲の人による陳述書
- 事故または災害があったことが証明できるもの
失踪宣告でも離婚できる
下記条件のいずれかに当てはまることで、離婚裁判ではなく「失踪宣告の申立」により自動的に離婚が成立します。
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【失踪宣告の条件(民法30条)】
- 生死不明になってから7年が経過したとき
- 戦地・災害・船舶沈没等の危難が去ってから1年間生死不明であるとき
法律上の失踪は死亡と同じ扱いであり、離婚成立と同時に相続手続きも始まります。
④強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
配偶者が治る見込みのない精神病にかかってしまい、結婚生活に貢献できない状況に陥ったときも、法定離婚事由となります。
ただし、一方的な請求が認められるとは言えません。
「離婚後も治療費を負担する」「生活保護や介助サービスを受けられるよう手配する」等の必要な生活保証の義務を果たすことが求められます。
③その他(性格の不一致やセックスレスなど)
①~④の理由がなくとも、民法770条2項の規定により「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」と認められるケースがあります。
過去の離婚事例をまとめると、以下のケースで裁判による離婚成立が実現しています。
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【婚姻を継続し難い重大な事由と認められるケース】
- 性格不一致
- 5年以上の別居期間
- 家庭内暴力(DV・モラハラ)
- 借金癖・浪費癖
- セックスレス
- 薬物またはギャンブル依存
- 社会活動に影響が出る宗教活動
- 犯罪に問われ服役している
離婚してくれない配偶者と関係解消する方法
夫婦間で離婚の合意を得られないときは、無理に協議を続ける必要はありません。
弁護士が代理人として交渉することで「離婚を拒み続けることは出来ない」とあっさり理解してもらえる可能性は十分あります。
離婚したくないと頑なに主張する事例では、その背景にある価値観の尊重を心がけています。
「子どもの生育関係に両親は欠かせない」等の独特な考え方に対し、それが司法の判断基準(=法定離婚事由)に沿わないと地道に説得することで、多くは離婚合意に至ります。
なお拒まれる場合は、生活費負担義務など相手方の負うデメリットを伝える必要もあるでしょう。
「ご依頼人の家庭にある諸問題を総合的に解決すること」を第一に、様々なアプローチを行っています。
有責配偶者からの離婚請求が認められるケースとは
法定離婚事由を作った側(有責配偶者)から離婚請求できないのは、精神的苦痛を負わせてなお自分勝手に離婚を求めることを「信義則に反する」とする判例が根拠です(最高裁昭和27年2月19日参照)。
かといって離婚成立を遅らせ続けていても、夫婦双方とその周囲の人(主に子ども)を不幸にするだけです。
そこで「婚姻関係がすでに破綻している事実」があれば、有責配偶者からの離婚請求も可能とする結論が下されています。
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【有責配偶者から離婚請求できる条件】
- 未成熟子(経済的に自立していない子ども)がいない
- 別居期間が長引いている
- 離婚請求が著しく社会正義に反するものでない
参考:昭和62年9月2日最高裁判決
離婚に応じさせる交渉はお任せください
法定離婚事由があれば、いずれ司法判断により離婚は成立します。
相手が離婚に応じず協議が平行線のままでも、時間をかけることで問題終結へと向かうでしょう。
しかし、実態のない結婚生活を長引かせることに益はありません。
お互いの生活費負担も法的に発生し続ける点を考慮すると、出来るだけ早く離婚の話し合いを前に進めるべきです。
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