離婚前の別居に焦りは禁物―別居の意味とメリット&デメリット
「離婚成立までにひとまず別居したほうがいいのか」とお悩みではないでしょうか。
夫婦が別居している事実は、財産分与を含む離婚手続き全体の争点になることがあります。
焦ってすぐ別居する前に、法律上の意味・離婚条件にどのような影響をもたらすかを慎重に見定めることをおすすめします。
別居のメリット&デメリットを中心に、事前準備として意識したいことや離婚の有利/不利に対する影響を専門家が解説します。
別居が離婚手続きに影響すること
別居を始めるタイミングと状況は、離婚条件に強く影響しています。
夫婦の別居開始は「婚姻関係が実質的な破たん」のサインとして裁判所に認識されているからです。
具体的には、どのような影響を与えるのでしょうか。
影響1:財産分与請求の基準点になる
財産分与請求の対象となるのは「同居期間の新得財産」のみです。
夫婦が別居し、客観的に明らかに協力関係にない状態になると、その後新しく取得した財産に対して分与請求することは出来ません。
これまで収入面で配偶者に依存してきた人にとって、この基準は重要です。
別居に踏み切るなら、適正な婚姻費用(=別居中の生活費)を確実に確保する必要があるでしょう。
影響2;別居を5年継続することで離婚事由になる
単に別居しただけでは裁判上で離婚が認められることはありません。
しかし、別居が続くと、多くの事例で「法定離婚事由(民法770条)」に該当するとして離婚成立の判断が下されています。
「相手が離婚に応じない」というよくある離婚トラブルでは、別居をひとつの解決手段として活用できます。
離婚前の別居のメリット
心身の安全と特有資産(夫婦いずれかの単独名義の資産)を守る必要があるときは、離婚目の別居に大いにメリットがあります。
それ以外にも、相手の気持ちを離婚に向けて動かす上では効果的だと言えるでしょう。
メリット1:以降相手と一切顔を合わせずに離婚できる
別居した後に「弁護士に交渉を依頼する」「調停を申し立てる」などの方法を取ることで、相手と一切関わらずに離婚を進められます。
不貞行為やDVで深く傷ついているケースや、離婚協議で決裂してしまった状況下では、まず一旦別居することが最善策です。
メリット2:子どもの養育環境を守れる
何よりも恩恵が大きいのは、子どもの心身と養育環境を守れることです。
「配偶者に浪費癖や借金がある」という事例では、同居を続けることで必要な生活費まで使い込まれがちです。
最もよくないのは、両親の争いを子どもに見せる(あるいは勘付かせる)ことです。
近年では両親の不仲が子どもに心理的悪影響を及ぼすという内容の研究結果が多くあり、夫婦がそれぞれ穏やかに暮らせる環境は子どもにとっても大切であることが分かります。
こうした意味でも、子どものために別居を積極的に検討すべきです。
メリット3:お互いに現実的な主張が出来る
離婚協議が泥沼化しそうな時は、いったん距離を置いて夫婦が互いを尊重し合える環境を整えることが大切です。
感情的な主張がなくなれば、離婚後の生活(主に経済的な側面)で折り合いをつける方法を見ることが出来るでしょう。
別居には、離婚手続きそのものを公平かつ有利に進めるという効果もあります。
離婚前の別居のデメリット
「悪意の放棄」に問われることがある
反対を押し切って別居を開始してしまうと、民法770条の「悪意の放棄」に該当する可能性があります。
別居の意思はなるべく話し合い、その中で「生活費を相手に支払うこと」「連絡が取れる状態にすること」は最低限約束すべきです。
有責行為の証拠収集が難しくなる
配偶者の裏切りを知って衝動的に別居を始めると、自宅にあるはずの有責行為の証拠が取得できなくなります。
証拠隠しが懸念される他、勝手に家に戻ると住居侵入罪に問われる可能性があり、ハイリスクと言わざるを得ません。
まずは冷静になり、慰謝料請求を含めた離婚準備を整えてから決断しましょう。
離婚を意識し始めた段階で焦りは禁物です。
「そんなに急ぐなら」と過大要求を押し付けられたり、お金以外の面でも実現不可能な条件を提示されたりする可能性があります。
別居開始を決断する前に、まずは専門家のアドバイスを聞いてみませんか。
弊所では、平日夜間でもご相談可能です。
別居開始時に準備すること
これから別居しようとする時は、将来に向けて十分なお金を確保できること・今後の離婚協議で不利にならないよう注意することの2点が重要です。
準備として以下の各ポイントに留意すると、スムーズで有利な関係解消が望めます。
別居と婚姻費用の分担について協議する
別居について相手に伝えることも重要ですが、最も大切なのは別居中の生活費について「婚姻費用の分担」の約束を取り交わすことでしょう。
夫婦共有資産の全体を把握する
財産分与の話し合いを意識し、別居前に夫婦共有財産の内訳・評価額全体を把握しておくのが望ましい方法です。
必要であれば家庭裁判所に「審判前の保全処分」を申し立てることで、財産隠しを防ぎながら離婚に備えられます。
住民票を移動させる
住民票を移動することは、十分な行政サービスを受ける上で大切になることがあります。
児童手当・児童扶養手当は別居中でも支給されますが、住民票所在地が同居のままだと夫婦共有口座に振り込まれてしまいます。
新住所でも子どもと自身の生活を守れるよう、転居時に適切な手続きを踏むことが大切です。
弊所では、万全な状態で離婚に臨んでいただくため、別居時点から依頼人の生活基盤を整えることを意識しています。
ご状況に応じて行政支援のご案内を含めてご案内し、最も大切な婚姻費用の確保についても弁護士が交渉にあたります。
あらゆることを想定した最良の「別居後の生活設計」はお任せください。
別居の決断は離婚の“結果”を左右します
別居は法的に「結婚生活の破たん」と見なされます。
財産分与の基準点となること、訴訟で離婚が成立するまでのカウントが始まることを意識すると、決して準備なしで臨めるものではありません。
婚姻費用を確保しながら、慰謝料請求までの証拠獲得・共有財産の把握までを進めて別居に踏み切るべきです。
夫婦関係の解消には思わぬトラブルがつきものです。
弊所では、ケース毎に離婚結果を意識した別居準備のアドバイスを行っています。
まずはご相談ください。